1回で必ず勝敗の決まるじゃんけんについて

じゃんけんの「あいこ」って、連続で続くと、なぜだか恥ずかしい気持ちになりませんか。照れ隠しで笑ってしまう人も多いと思います。

そんな、じゃんけんの醍醐味といえる「あいこ」ですが、今回は、興味本位で「あいこのないじゃんけん」というものを考えてみます。

 

問題

最初の1回で必ず勝者が1人決まるじゃんけんのルールを考案せよ。

 

便宜上、1回で必ず勝敗が決まるじゃんけんを、「即決じゃんけん」と呼ぶことにします。

 

きっかけ

3人で行うジャンケンのルールを改変して、勝者が一回でランダムに1人決まるようにすることはできますか? - Quora

 

満たすべき条件

1回で勝敗が決まるじゃんけんと言いましたが、ただ決まればいいというわけではありません。公平でなくてはなりません。

たとえば、誰かが初めから勝ちやすかったり、ある人の出した手によって他のある人が負けやすくなったりしたら、不平等です。

 

ここでは、次の条件を満たすようなじゃんけんを考えます。

  • プレイヤーは全員、同じ種類の手を使える
  • プレイヤーは全員、他の人達のどんな手に対しても、同じ数の勝てる手を持つ

この2つの条件の下では、対称性によって、すべての手は同じ強さになります。すなわち、以下が満たされます。

  • 「すべての出せるN個の手の中からランダムに選んで出す」という戦略をとった場合、それ以外のプレイヤーがどのように戦略を変えても、勝率は常に1/Nになる。

簡単に言えば、普段の、「グー」「チョキ」「パー」のじゃんけんと同じような、じゃんけんであるべきということです。

 

(余談: 最初の条件で、「同じ種類の手を使える」としましたが、実は、少なくとも「同じの手を使える」で十分です。なぜなら、それらの違う手を、同じ種類の手として読みかえることができるからです。たとえば、インドネシア式の「人・象・アリ」の手を使ったとしても、それぞれを「グー・チョキ・パー」に対応させれば、同じ種類の手で行うじゃんけんと変わりありません。)

 

また、満たすべき条件として、「ルールが分かりやすい」ということも重要です。

 

満たすことのできない条件

普通のじゃんけんとは違い、即決じゃんけんでは満たせない条件が1つあります。分かりますか。

  • 勝利条件は対称である

これは、「ある人が勝ちになるような条件で自分も勝つことができる」という条件ですが、これは満たすことができません。

なぜなら、プレイヤー全員が同じ手を出した時にも、誰かを勝者にしなければならないからです。

人によって違う手を出せるようにするか、それとも、人によって勝利条件を変えるか、今回は分かりやすさのために後者を採用しました。

 

2人のときの即決じゃんけん

では、即決じゃんけんを考えていきます。

 

2人の場合の即決じゃんけんは、使える手を2種類とすれば、実質的に1種類しかありません。

「グー」と「パー」の2種類の手を使うとき、ルールは以下のようになります。

  • 2人が同じ手、つまり普通のじゃんけんでいう「あいこ」なら、プレイヤーAの勝ち
  • それ以外なら、プレイヤーBの勝ち

先に、どっちが「あいこ勝ち」にするか決めておく必要があります。

 

このじゃんけんに名前を付けるとしたら、「グーパーじゃんけん」といったところでしょうか。

 

ヤギじゃんけん

上で示した、あいこかそれ以外かのじゃんけんは、2人が同じ種類の手を使うので少々味気ないかもしれません。

先程は、同じ手を使うと言っていましたが、試しに、プレイヤーごとに違う手が使えるようにすると、もう少し趣きのあるじゃんけんを作ることができます。

 

次の事実を使いましょう。

事項1

4すくみの関係(A→B→C→D→A)に対して、プレイヤー1がAとC、プレイヤー2がBとDを出せるようにした2人のじゃんけんは、即決じゃんけんである。

 

これで即決じゃんけんになることは、4通りの結果を表にまとめればすぐに分かると思います。

つまり、うまい4すくみがあれば、うまい2人用の即決じゃんけんが作れることになります。

 

ヤギじゃんけん

そこで、グーチョキパーに「ヤギ」を加えた「ヤギじゃんけん」を考えてみます。4すくみは以下のようになります。

  • 「グー」→「チョキ」→「ヤギ」→「パー」→「グー」

一方のプレイヤーは「グー(石)」と「ヤギ」を使います。

もう一方のプレイヤーは「チョキ(はさみ)」と「パー(紙)」を使います。

(たまたまですが、自然側と人工物(文房具)側に分かれてます)

 

ヤギが、ハサミに負けて紙に勝つ理由は以下の通りです。

  • 「チョキ」→「ヤギ」: ヤギはハサミで毛刈りされるので
  • 「ヤギ」→「パー」:  ヤギは紙を食べるので(ただし健康上よくないらしい)

また、「ヤギ」を手でどう出すかというと、キツネとほとんど同じで、グーの状態から人差し指と小指を立てて、耳もしくは角を表現します。

ポイントとして、ヤギはキツネと違い耳が横に付いているので、立てた指を心持ち横に広げるとよりヤギらしくなります。

 

ルールをまとめておきます。

ヤギじゃんけんのルール(2人)

  1. 「石・ヤギ」側と「ハサミ・紙」側を決めておく。
  2. それぞれの側から手を選んでじゃんけんをする。
  3. 「グー」→「チョキ」→「ヤギ」→「パー」→「グー」の強さ関係から、勝敗を判定する。

 

問題点として、片方のプレイヤーしかヤギが使えないという問題があります。

これに関しては譲り合うしかないです。どちらがヤギ側か決めるためにじゃんけんをしたら、元も子もないですから。

 

3人以上の即決じゃんけん

3人以上の即決じゃんけんで、おそらく一番分かりやすいのが「MOD(モッド)じゃんけん」です。「MOD」というのは、割り算の余り、に近い意味の言葉です。

MODじゃんけんのルール(N人)

  1. 各プレイヤーの番号を1~Nで決めておく。
  2. 各プレイヤーは、1~N本の指を出してじゃんけんをする。
  3. 全員が出した指の数を合計して、その値をNで割ったときの余りと等しい番号の人が勝ち。(余りが0のときは、N番目のプレイヤーが勝ち)

 

たとえば7人で行った場合、出た指の合計が26なら、26割る7の余りは5ですから、5番の人が勝者となります。

1~N本を手で表現する必要があるので、両手を使い「0本」を出せる手に含めても、せいぜい11人が最大可能人数となります。

このじゃんけんは、全員が同じ手を使えるので分かりやすいですが、園児などにとっては、ルールが少々難しいかもしれません。

 

また、この余りを使った即決じゃんけんは、私が一番に考えたわけではないです。

一番最初に考案した人は不明です。軽くウェブ検索したところ、古い記事で2012年のものがあります。

引き分けのないじゃんけんに関する一考察 - あすかぜ・ねっと

 

手の数を減らせるか?

上で示したMODじゃんけんですが、N人でやる時にはN種類の手が必ず必要になるのでしょうか。たとえば、4人での即決じゃんけんを、グーとパーの2種類の手だけで使って行うことはできないのでしょうか。

 

そういったことは、多少数学的な内容になってきます。

記事の長さも考えて、即決じゃんけんに関する考察は別の記事で行うことにします(時期未定)。

 

人数を減らすじゃんけん(サバイバルじゃんけん)

3人以上の場合の、勝者を1人に決める即決じゃんけんとして、MODじゃんけんを紹介しましたが、許容できない問題点がありました。

  • ルールや勝敗の判定が簡単ではなく、時間が掛かる
  • 基本的に11人以下でしか行えない

たとえば、小学校の30人のクラスでは使えないわけです。

 

勝者を1人と定めず、任意の人数とすれば、もっと簡単で分かりやすいじゃんけんにすることができます。つまり、サバイバルじゃんけんです。

小さい頃の記憶で、先生とじゃんけんして負けたら脱落していくという、生き残りじゃんけんをした記憶がある人も多いでしょう。

 

「先生に負けたら脱落」というサバイバルじゃんけんは、各人が2/3の確率で生き残るじゃんけんと言えます。

他に、例えば、コイントスの裏表をグーとパーで予想する「コイントスじゃんけん」というものを考えれば、各人が1/2で生き残るじゃんけんとして機能します。(ただし、コインが必要)

 

このようにすれば、より簡単なルールで、あいこのないじゃんけんが実現できます。

ですが、サバイバルじゃんけんは、正当な即決じゃんけんとは言えません。なぜなら、全員同時に生き残ったり脱落したりする可能性もあるからです。取りも直さず、全員が同じ手を出した時に勝者を決めなくてはならないという問題を、解決できてないのです。

 

実用的な人数を減らすじゃんけん

最後に実用的な話をして終わります。

 

実用的に素早く勝者1人を決めるじゃんけんとしては、「ゲーマーじゃんけん」というものが知られています。ボードゲームなどで最初の手番を決めるときに重宝されるようです。

ゲーマーじゃんけん – Table Games in the World

 

これはいわゆる「少数派じゃんけん」です。ルールは以下の通り。

  • グー・チョキ・パーの3種類を使う
  • 一番少数派の手を出した人の勝ち(生き残り)
  • 少数派の2種類の手の人数が同じなら、通常のじゃんけんの強さ関係で一方を勝ちとする
  • グーチョキパー3種類が同数なら、あいこ

 

たとえば、7人で「グー2人、チョキ4人、パー1人」なら、パー1人の勝ちです。

たとえば、7人で「グー3人、チョキ2人、パー2人」なら、チョキ2人の勝ちとなります。

一応あいこもありますが、普通のじゃんけんよりもずっと確率が低く、早く勝者を絞り込むことができます。

 

まとめ

  • 2人用の即決じゃんけん「グーパーじゃんけん」
  • 2人用の即決じゃんけん「ヤギじゃんけん」
  • 3~11人用の即決じゃんけん「MODじゃんけん」
  • 即決じゃんけんに似たじゃんけんとして、「サバイバルじゃんけん」がある
  • 早く勝者を決められる実用的なじゃんけんに、「ゲーマーじゃんけん(少数派じゃんけん)」がある

ヤギじゃんけんのみが、オリジナルです。

ありがとうございました。

 

おまけ

この記事を書いている中で、クイズを思いついたので、おまけとして載せておきます。

クイズ

5年2組の田中さんは、各人が1/2で生き残るサバイバルじゃんけんを、先生も参加者に含めて、さらにコインなしでやりたいと考えました。そこで次のようなルールを考案しました。

  • 出せる手は「グー」と「パー」の2種類
  • 毎回、生き残っている人のうち誰か2人を先生役、補佐役とする
  • 先生役以外は先生役と同じ手を出せたら生き残れる。先生役は補佐役と同じ手を出したら生き残れることにする

これなら、先生も参加して、コインも使わずにサバイバルじゃんけんを楽しめる。そう田中さんは思っていました。しかし、実はちょっとした問題点があります。それは何でしょうか。また、どのようにその問題を修正できるでしょうか。

 

ヒント: 先生役と補佐役は、運命〇〇〇(漢字3文字)