矛盾と充足不能性が同値であることの証明

{\displaystyle}
 命題論理において命題の集合を\Sigmaとしたとき、\Sigmaが矛盾していることと、\Sigmaが充足不能であることが同値であることを証明する。
 この記事は、文章の練習とTeX記法の練習でもある。
 最近『ゲーデルと20世紀の論理学2』を読んでいるのだが、本命題が暗黙的に使われているように思えたので理解を深めるために示した。
 もし自分で考えたい人は閲覧に注意すること。
 本書において\Sigmaが矛盾するとは、\Sigmaから矛盾\bot=\neg(p_0\rightarrow p_0)が証明されることと定義される。ほかの前提や詳しいことは本書を読んでもらうことにしたい。

証明

 「\Sigmaは矛盾する \Leftrightarrow \Sigmaは充足不能」を示す。
 \Rightarrowの証明: 対偶を示す。\Sigmaを充足可能とし、充足させる真理値関数の一つをVとおく。すると、\Sigma\vdash Aとなる命題AはすべてV(A)=Tを満たし、V(\bot)=Fである矛盾\bot\Sigmaから証明されない。なぜなら、定理2.26の\Rightarrowの証明と同様に、3つの公理PについてはV(P)=TV(P)=TかつV(P\rightarrow Q)=Tのとき、V(Q)=Tであるからである(帰納的に示せる)。
 \Leftarrowの証明: 準備として、定理2.26(命題論理の一般化された完全性定理)「\Sigma\vdash A\Leftrightarrow\Sigma\models A」は、\Sigmaが矛盾するときも成り立つことを示す。というのは、本書の証明中では暗黙的に\Sigmaが充足可能だったり、無矛盾だったりして話が進められているからである。補題2.24から、\Sigmaが矛盾するとき、任意の命題Bに対して、\Sigma\vdash B。本記事の命題の\Rightarrowより、\Sigmaは充足不能だから任意の命題Bに対して、\Sigma\cup\neg Bは充足不能であり、補題2.9から\Sigma\models B。よって、定理2.26は \Sigmaが矛盾するときも成り立つ。
  \Leftarrowを示す。
\begin{align*}
&\Sigmaは充足不能\\
\Leftrightarrow&\Sigma\cup\{B\}は充足不能(Bは\Sigmaに属する任意の命題)\\
\Leftrightarrow&\Sigma\cup\{\neg\neg B\}は充足不能\\
\Leftrightarrow&\Sigma\models\neg B(補題2.9より)\\
\Leftrightarrow&\Sigma\vdash\neg B(定理2.26(命題論理の一般化された完全性定理)より)\\
\Rightarrow&\Sigma\vdash\neg\bot\rightarrow\neg B(P1と三段論法より)\\
\Rightarrow&\Sigma\vdash B\rightarrow\bot(P3と三段論法より)\\
\Leftrightarrow&\Sigma\cup\{B\}\vdash\bot(三段論法より)\\
\Leftrightarrow&\Sigma\vdash\bot。(B\in\Sigmaより)\\
\end{align*}
証明終わり。

後記

  • 完全性定理を前提にしているのは違和感がある。
  • 数学書の中で「証明は容易」と書かれていたり、証明が省略されていたりする部分は、自分でやってみると理解が深まり、自信につながります。はじめの一歩にお勧めです。